甘くする食べ方は、柿渋を抜くこと
一見しただけでは、甘いのか渋いのか分からない、見分け方が素人には難しいのが柿ではないでしょうか。
この果実には、「柿渋(カキタンニン)」が含まれています。
抗菌・抗酸化・防腐・消臭の効果がある可溶性物質で、幅広い分野で活用されています。
そしてこの成分が、渋みの原因になります。
お茶に含まれるカテキンは、この成分の仲間です。そう言えば、お茶には渋味がありますよね。
では、甘柿と渋柿があるのはなぜでしょう?
- そのワケは、タンニンの性質と関係があるとされています。
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タンニンが水溶性の場合・・・渋味になる。柿渋。
タンニンが不溶性の場合・・・渋くならない。
なるほど。
とすると、甘くする方法、渋柿を美味しく頂く食べ方としては、水溶性のタンニンを不溶性に変えてしまえば良い、という事になりそうです。
つまり、「柿渋」を抜けば良いのです。
そこで、古来より私たちの先達は知恵を働かせて、渋柿を食べる方法を工夫してきました。
干し柿にする
地方ごとに、また時代の流れに連れて様々な渋柿の食べ方が考案されてきたと思うのですが、もっとも伝統的でオーソドックスな渋柿の食べ方で、自然の摂理に任せた作り方が、干し柿ではないでしょうか。自然乾燥させて甘くします。いわば「半生のドライフルーツ」ですよね。
皮をむき、ヘタの部分にヒモをくくりつけて、家の軒下などに吊るします。この事から、吊るし柿とも呼ばれます。
風通しの良い場所を選ぶことがポイントでしょうか。それから定期的に実を揉むと甘くなりやすいそうです。吊るす期間によって、柿渋の抜け具合や乾燥具合が変わってきます。
食べ頃は、その方の好みによって異なりますが、2週間以上は干した方が良いようです。マンションやアパートのベランダでも、日当たりや風通しが良ければ作る事が可能です。
- 代表的な製法(名産品)
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市田柿
長野県の下伊那郡高森町(旧・市田村)で栽培されていた品種「市田柿」を干し柿にしたものです。この南信州地域では、昔は焼いて食していたそうですが、大正時代頃より干し柿としての出荷がなされるようになりました。
あんぽ柿
元来、東北の福島県の伊達地域で大正時代の頃から作られていました。硫黄で薫蒸してから干すのが特徴で、柔らかく水分を多く含んでいます。
中身はみずみずしくジューシーになり、スイーツ感覚で食べる事が出来ます。
枯露(ころ)柿
枯露柿は、あんぽ柿よりも格段に乾燥しています。表面に糖分の白い粉が吹いている商品もあります。干す時に、ころころと転がす事が名前の由来だとも言われているようです。
北陸や甲州が名産地として知られています。いかにも干し柿らしい素朴な印象を感じます。
ホワイトリカー漬け・樽柿
ポピュラーな方法として、ホワイトリカー(蒸留酒)に漬けて渋抜きをする方法があります。
使用量はごく少量でOKです。 漬けると言うか馴染ませる感覚でしょう。度数は30~35度程度、メーカー、銘柄によって風味も多少は変わるでしょう。皮はむきません。 使用する容器は何でも良くて極端な話、ビニール袋でも作れます。
数日間置いておくと食べれるでしょう。 但し、低温の場所に置くと、日数が更にかる場合があります。
ちなみにアルコールに漬けたり掛けたりして渋抜きしたものは、「樽柿」とも呼ばれています。東北地方では古くから行われていた、伝統的な作り方です。
その他、いろいろな渋抜きの方法があります
- 米ぬかに漬ける
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漬物を作るような感覚ですよね。スイカやウリの皮をつけても美味しいですが、柿の皮も米ぬかに漬けると美味しく食べる事が出来ます。
- 湯抜きをする
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ぬるま湯(40度前後)に漬けて渋抜きをする方法があります。温める事で熟するスピードを早めるのでしょうね。そのまま数日間置いておく方法もあるようです。
- リンゴを使う
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渋柿をリンゴと一緒にビニール袋などに入れておく作り方です。 リンゴから放出されるエチレンガスには、植物・果実が熟するのを早める効果があるのだそうです。
- ドライアイス
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専業の方たち(製造・販売業者さん)が、一気に大量の渋柿を処理する時などに行う方法として、炭酸ガスで柿渋を抜く方法があります。そして、家庭では炭酸ガスの代用品として、ドライアイスを使用する事により、同様の効果が見込めます。
大雑把の手順としては、ビニール袋などに渋柿とドライアイスを入れて、充分に空気抜きをしてから、しっかりと密封して数日間置いておく、といった作り方になります。
私は実践経験がありませんが不器用者ですので、個人的には難易度が高そうな方法に思えます。
渋柿の種類
そもそもは渋柿が柿の「主流派」で、甘柿は実はその突然変異だと知った時、「へぇ~」と驚きましたが、柿には、ざっと1000もの種類がある事にも、結構びっくりしました。
その中でも、渋柿の種類としては、平核無が元祖的な存在で、刀根早生、平種無(八珍柿)、三社、甲州百目、西条、蜂屋、堂上蜂屋 市田、富士、会津身知らず、などなど多数あります。
市田柿のように、名前をブランド化して販売されているケースも少なくありません。